【Armspear 1897年特許モデル】ボストン・アンド・メイン鉄道で使われたレイルロードランタン

Armspear レイルロードランタン B&MRR刻印入りグローブの全体像
Armspear レイルロードランタン B&MRR刻印入りグローブの全体像

Armspear(アームスピア)とは?

今回ご紹介するのは、アメリカ・ニューヨークのArmspear(アームスピア)社が製造したレイルロードランタンです。

レイルロードランタンとは、鉄道員が夜間の合図や点検に使った手持ちの灯油ランタンのこと。ランタンを振ったり上げ下げしたりして、機関士へ「止まれ」「進め」などの合図を送っていました。

Armspear社のルーツは、1880年代に創業した「Railroad Signal Lamp and Lantern Company(レイルロード・シグナル・ランプ&ランタン社)」です。1890年代初めから「Armspear」の名前でランタンや照明器具を販売するようになり、1902年の再編で社名もArmspear Manufacturing Companyに改められました。社名が変わったあとも、前身の会社の設計や特許を受け継いだランタンを作り続けています。

アメリカの鉄道ランタンの中でも、とくに品質が高いメーカーとして知られています。丈夫さを重視した作りのため、100年近く経った今でも状態の良い個体が見つかることが多く、コレクターからの評価も高いブランドです。

第一次世界大戦後には、背の低いグローブを使うショートグローブ型「1925」モデルを発売し、1931年頃まで自社で製造しました。それ以降のArmspear名のショートグローブ型は、Adams & Westlake社が1960年代まで受託生産しています。

Armspear レイルロードランタンの正面と側面。平板の縦フレームと2本の横リング

ボストン・アンド・メイン鉄道の刻印

この個体の見どころは、鉄道会社名の刻印がトップとグローブの両方に残っていることです。

トップには「ARMSPEAR MAN’F’G CO. NEW YORK」の社名と、「B&MRR」の文字が打ち出されています。B&MRRは、アメリカ北東部のニューイングランド地方を走っていたBoston & Maine Railroad(ボストン・アンド・メイン鉄道)の略称です。

トップのARMSPEAR MAN'F'G CO. NEW YORKとB&MRRの刻印、タンク底面
トップの刻印の拡大。ARMSPEAR MAN'F'G CO.とB&MRR

グローブにも「B&MRR」のエンボスが入っています。鉄道ランタンのグローブは割れやすく、後年に別のものへ交換されていることが少なくありません。本体と同じ鉄道会社の名前が入ったグローブがそろっている点は、大きな魅力です。

B&MRRエンボス入りのトールグローブ

1897年の特許日が入ったツイストオフタンク

Armspearのランタンは、タンク(燃料容器)をひねって外せる「ツイストオフ」式を採用しています。フレームを分解しなくても、給油や芯の交換のためにタンクを取り出せる仕組みです。

タンクを受ける部分には、「PAT. AUG. 25 ’91」「SEP. 21 ’97」「NOV. 30 ’97」の特許日が刻まれています。コレクターの間では、刻まれた特許日のうち一番新しい年で型を見分けるのが一般的で、この個体は「1897年特許」のモデルにあたります。

ちなみに1897年は、Armspear Manufacturing Companyという会社ができる1902年より前です。これは前身のRailroad Signal Lamp and Lantern Companyが取得した特許を、Armspearがそのまま使い続けていたためです。なお、フタとタンクで刻まれた特許日が異なる個体もあるため、年代を見るときは両方を確認するのがおすすめです。

タンク受け部分の特許日刻印 PAT. AUG. 25 '91 SEP. 21 '97 NOV. 30 '97と真鍮の番号プレート
ツイストオフ式タンクの留め具部分。真鍮のラッチ

頑丈さが売りの「Steel Guard(スチールガード)」

Armspearの背の高いグローブを使うランタンは、大きく2つの型に分かれます。平たい鋼板を縦フレームに使った「Steel Guard(スチールガード)」と、太い丸線を縦フレームに使った、のちの「Giant(ジャイアント)」です。

今回の個体は、平板の縦フレームに2本の横リングを組み合わせたSteel Guard型です。1901年・1907年のカタログでは「#3」(横リング1本の型は「#4」)、1915年のカタログでは「#106 Steel Guard」と呼ばれていました。

1915年のArmspear社のカタログには、縦フレームと横リングに交互に切り込みを入れて噛み合わせることで、ハンダを使わずにしっかり自立するフレームになると説明されています。当時の他社製品より厚い鋼材を使っていたことも、Steel Guardが頑丈と言われる理由です。

アメリカの鉄道ランタン研究サイト「Railroadiana Online」がまとめたArmspearの刻印調査でも、B&M鉄道の1897年特許モデルとして「平板の縦フレーム・横リング2本・ツイストオフタンク」の組み合わせが記録されています。今回の個体は、この組み合わせにぴったり当てはまります。

真鍮の番号プレートとバーナー

トップの煙突部分には「B8553」、タンク受けの帯には「24492」と打たれた真鍮のプレートが付いています。鉄道会社が備品の管理に使った番号と考えられ、実際に現場で使われていた道具であることを感じさせるディテールです。

トップの真鍮プレートB8553と、真鍮製バーナー付きのタンク

分解して分かる構造

トップは蝶番で開き、グローブを上から出し入れできます。分解すると、フレーム、トップ、グローブ、タンク、バーナーに分かれます。100年以上前の道具ですが、構造はシンプルで、現在でも手入れしながら使うことができます。

分解したArmspearランタン。フレーム、開いたトップ、グローブ、タンク、バーナー

点灯時の様子

実際に点灯すると、B&MRRのエンボスがグローブ越しに浮かび上がります。燃料はパラフィンオイルがおすすめです。

Armspear B&MRRランタンの点灯状態

こんなArmspearもあります(過去の取り扱い品より)

キャンプキングダムでは、これまでにもArmspearのレイルロードランタンをいくつか取り扱ってきました。その中から、比較的古い特許日を持つ希少な個体をご紹介します。

1897年特許|ニューヨーク・ニューヘイブン&ハートフォード鉄道

今回の個体と同じ、1897年特許のSteel Guardです。グローブには「NY.NH&HRR」のエンボスが入っています。ニューヨークとニューイングランド地方を結んでいた、New York, New Haven and Hartford Railroad(ニューヨーク・ニューヘイブン&ハートフォード鉄道)のものです。

Armspear 1897年特許 NY.NH&HRRランタンの点灯状態
NY.NH&HRRエンボス入りのグローブ

タンク受けには、今回の個体と同じ「PAT. AUG. 25 ’91 SEP. 21 ’97 NOV. 30 ’97」の特許日が刻まれています。

NY.NH&HRRランタンのタンク受けに刻まれたPAT. AUG. 25 '91 SEP. 21 '97 NOV. 30 '97

1913年特許|フィラデルフィア&レディング鉄道

こちらは1913年の特許日を持つSteel Guardです。グローブには「P&R Ry」のエンボスがあり、アメリカ東部ペンシルベニア州を中心に走っていたPhiladelphia & Reading Railway(フィラデルフィア&レディング鉄道)で使われていたものです。

Armspear 1913年特許 P&R Ryランタンの全体像
P&R Ryランタンの点灯状態

1897年特許の個体と比べると、バーナーまわりの作りが変わっています。バーナーには「ARMSPEAR」と「WING LOCK」の刻印が入った楕円のプレートが付いています。

ARMSPEARとWING LOCKの刻印が入ったバーナー
P&R Ryエンボス入りのグローブ

1913年特許|フタに1880年代の特許日が残る個体

もう1台の1913年特許の個体では、タンクの真鍮の帯に「PAT’D MAY 31, 1913 / AUG. 19, 1913」と刻まれています。

Armspear 1913年特許ランタンの点灯状態。LVRRエンボス入りグローブ
タンクの真鍮帯に刻まれたPAT'D MAY 31, 1913 AUG. 19, 1913

一方でフタを見ると、社名の内側に「MADE UNDER PATENTS」の文字とともに、1880年代の特許日が並んでいます。前半でご紹介した「フタとタンクで特許日が異なる」ことがよく分かる個体です。

フタのARMSPEAR MAN'F'G CO. NEW YORKと1880年代の特許日、P&R.RYの刻印

トップには「P&R.RY」の刻印がありますが、グローブはLehigh Valley Railroad(リーハイ・バレー鉄道)の「LVRR」入りです。長い年月の中でグローブが入れ替わることもあり、トップとグローブの鉄道名がそろった個体がいかに貴重かが分かります。

まとめ

Armspearの1897年特許モデルは、ツイストオフ式タンクと平板の縦フレームを備えた「Steel Guard」型のレイルロードランタンです。前身の会社から受け継いだ特許と、ハンダを使わない頑丈なフレームに、品質を重視したArmspearらしさが表れています。

今回の個体は、トップとグローブの両方に「B&MRR」の刻印が残り、ボストン・アンド・メイン鉄道で使われていたことがはっきり分かります。グローブまで鉄道名入りでそろった状態は、アメリカの鉄道史を伝える一台として貴重な存在です。


キャンプキングダムでは、アメリカ製のレイルロードランタンも取り扱っています。

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